COLUMN

【リゾート最前線】世界各地の“サステナブル・ラグジュアリー”な宿泊施設7選

世界ではコロナ禍にもかかわらず、大きなホテルやリゾートがどんどん新規オープンしているのをご存知でしょうか?

最近のリゾートは、地球環境に配慮して作られていて、そうした空間で過ごすことが自分の健康やメンタルヘルスにも好影響を与えるという、エココンシャスな滞在を提供するのがブームです。

私がこれからの新しい旅先として注目しているのが、Sustainable Luxury Resort(サステナブル・ラグジュアリー・リゾート)!それをレポート資料にまとめる機会があったので、そのまま記事にしてみます。

世界に魅力的な施設は山ほどあるのですが、暖かい地域/寒い地域/老舗/新規オープンなどバランスよく、個人的にときめいたリゾートを7施設をピックアップしてみました。近い将来の旅先候補として、ぜひ眺めてみてください。

“サステナブル・ラグジュアリー”がこれからのリゾートに不可欠

sustainable-luxury-resort-11SDGsが知れわたるようになって久しいですが、これからは“サステナブル・ラグジュアリー”の時代です。「持続可能性を考えながら、地球にも自分にも贅沢な滞在をする」という新しいスタイル。

実は、コロナ禍にも関わらず、世界のリゾートは2021年にも続々オープンしています。逆にコロナになってから建設計画を進めたものが、今になって完成してきているという感じ。人の流れが減ったため、工事も捗ったのでしょうか。

「コロナ後のツーリズム」の可能性をみんな信じていることの表れだと思います。

それはコロナ前のようにたくさん消費する豪華さ・贅沢さではなく、より本来の人間らしく戻り、自分を整えていくような、本質的な豊かさを追求するようになっていくはず。そんな体験ができそうなリゾートを7つピックアップ。

SVART(スヴァルト)/メロイ地方、ノルウェー

sustainable-luxury-resort-1_SVARTSVART©
北欧氷河に建つ、自ら発電するエナジー・ポジティブ・ホテル。年間消費エネルギーを従来比85%削減し、最先端のマインドフルジャーニーを提案

開業年:2021年
エリア:メロイ地方、ノルウェー
運営元:Snøhetta
公式サイト:https://www.svart.no/

ノルウェー北部の氷河の麓、水上に立つ円形状のホテル。フィヨルドのパノラマを望める約100室の客室に加え、ラウンジ、ジムやスパ、レストラン、提供する食材を生産するための農場まで敷地内に備えています。

建物が自らエネルギーを生み出し、その量がホテル全体の消費量を上回る「エネルギー・ポジティブ・ホテル」として知られます。インパクトのある建物の形状は緻密に設計されたもので、1年を通じて太陽の動きや日照量を考慮し、上部に設置したソーラーパネルの発電量が少なくなる冬季の電力も夏季からの蓄電で賄えるようになっているそう!

基礎建築には木材が使われ、オープンから5年以内に完全なオフグリッド、カーボンニュートラル、廃棄物ゼロを目指しています。

✔その他のポイント

  • スノヘッタは北欧発の建築家集団。ユニークで先鋭的な建築を多く手掛ける
  • 「ウェルネス」を柱のひとつに掲げ、滞在中は専属のヘルスコンシェルジュのサポートの元、個人に合ったウェルネスプログラムが受けられる。音楽ヒーリングやクライオセラビーなど、最先端のセラピーセッションを選択することも可能
  • 北極圏ならではのアクティビティも充実している。アイスクライミングやフィヨルドダイビング、白夜・極夜の中で行うヨガ、夏は乗馬やハイキングなども案内する

 

SONEVA FUSHI(ソネヴァ・フシ)/モルディブ

sustainable-luxury-resort-2_SONEVA FUSHISONEVA©
25年前から環境保護に取り組むサステナブルリゾートの先駆者。裸足で滞在する“ベアフット”を大切に、自然と調和する心を育てるリゾート

開業年:1995年
エリア:モルディブ
運営元:Soneva
公式サイト:https://soneva.com/

廃墟になっていた島のホテルを改築し、自然へのインパクトの少ない48棟のヴィラとして1995年にオープン。当時はまだ注目度は低かった「サステナビリティ」をいち早くコンセプトに据えました。

世界のリゾートとしては初めて、1998年にプラスチックストロー、2008年にペットボトルの禁止を宣言。リゾート内で排出されるゴミは、発泡スチロールは粉砕してセメントと混ぜて建材にしたり、生ゴミはバクテリアを加えて肥料にしたりと、90%がリサイクルされています。

滞在中の体験として、ベアフット(裸足)がひとつの大きな特徴。ゲストは到着後、”No News, No Shoes”と書かれた袋に靴を預け、リゾート内を裸足で歩きます。レストランのドレスコードも裸足を基本とし、砂の上を裸足で歩くことで感性が研ぎ澄まされる体験を大切にしています。

✔その他のポイント

  • 「海を愛する心を育てる」ことを何よりの環境保護への近道と考え、海洋生物学者と行くシュノーケリングなど海と触れ合えるツアーを提供している
  • 近隣の島にエコセンターを設置したり、ソネバ基金を設立して他の島を支援したり、長年のリゾート運営による知見をいかした活動も行っている
  • アジアン、中東、ベジタリアン、インターナショナルなど数種類のレストランがあり、それぞれユニークな空間デザインの中ヘルシーな食事が楽しめる

 

Six Senses Botanique(シックス・センシズ・ボタニーク)/マンティチラ山脈、ブラジル

sustainable-luxury-resort-3_Six Senses BotaniqueSix Senses Group©
ブラジル山脈地帯の伝統と食材をいかしたエコ・リトリート施設。地元デザイナーによって建てられ、環境や周辺生態系に配慮した設備も備える小規模リゾート

開業年:2021年2月
エリア:マンティチラ山脈、ブラジル
運営元:運営元:Six Senses Group
公式サイト:https://www.sixsenses.com/en/resorts/botanique/

リオデジャネイロから車で3時間半のマンティチラ山脈に建てられたエコ・リトリート施設。徹底してローカルにこだわり、地元の建築資材を使って地元デザイナーたちによって建設されました。周辺の生態系へ配慮し、客室は7室のスイートルームと13棟のプライベートヴィラのみ。

レストランで提供する食材もブラジル産にこだわり、直営農園から仕入れたオーガニック野菜を使ったボタニカルな料理を提供。敷地内に7つの湧き水があるので、ゲストには自家製のミネラルウォーターを提供しています。また、敷地内に水処理ステーションも設置。

提供する食材等は一切空輸に頼らず、自家栽培のみでCO2排出削減に貢献しています。コンポストも設け、リゾート内で出た廃棄物は土に還元しています。

✔その他のポイント

  • シックス・センシズは、世界でラグジュアリーリゾートの建設を手がけるリゾート運営グループ。当施設は元々ホテル&スパとして運営されていた施設をリオープンした形
  • 2021〜2022年にかけて増設予定もあり、トリートメントルーム、ウェルネスエリア、フィットネスセンターとプールなども追加される予定
  • ブラジルの伝統的な儀式やワークショップ、フェスティバルなどを行えるプログラムも用意している。ブラジルらしさや地域の文化を重んじた体験を提供する

 

Casa di Langa(カサ・ディ・ランガ)/ピエモンテ、イタリア

sustainable-luxury-resort-4_Casa di LangaCasa di Langa©
ピエモンテのぶどう畑に隣接するサステナブルな保養地。灌漑に100%リサイクル水を使用、レストランではFarm to Tableをコンセプトに地元食材を提供

開業年:2021年春
エリア:ピエモンテ、イタリア
運営元:Preferred Hotel Group
公式サイト:https://www.casadilanga.com/about/

世界最高のワインと白トリュフの産地であるイタリア北部ピエモンテ州に2021年春開業したばかり。

客室は39室と中規模で、ユネスコ世界遺産に登録されたぶどう畑に隣接するリゾート。灌漑にはリサイクル水を100%使用し、カーボンニュートラルを目指した工夫もするなど、サステナブルな保養地として環境への取り組みも行っています。レストランではFarm to Tableをコンセプトに、庭園や地元生産者から仕入れたばかりの新鮮な食材を使った料理を提供し、姉妹ワイナリーの希少ワインとともに味わえます!

伝統や持続可能性(Sustainability)と最先端の贅沢(Luxuary)を両立できるリゾートを目指しています。

✔その他のポイント

  • 「リラックス、リチャージ、リフォーカス」を掲げ、ウェルネス設備も充実させている。スパでは自然の材料を使ってエコロジーに配慮した体験を提供。フィットネス設備も最新のものを揃える。ヨガやピラティスのコースも用意している
  • 料理教室やワインテイスティングの体験も提供。地元を熟知した専門家によるオーダーメイドツアーにも対応し、好みにあった体験をアレンジしてもらうことができる

 

Whitepod Eco-Luxury Hotel(ホワイトポッド・エコラグジュアリー・ホテル)/ヴァレー州、スイス

sustainable-luxury-resort-5_Whitepod Eco-Luxury HotelWhitepod Eco-Luxury Hotel©
静かな山の斜面に建ち、没入体験ができるドームテント型ホテル。車がアクセスできない静寂の中、節水やリサイクルに配慮されたプライベートポッドでラグジュアリーな滞在

開業年:2004年
エリア:ヴァレー州、スイス
運営元:Whitepod Eco-Luxury Hotel
公式サイト:https://www.whitepod.com/en/

スイス・ヴァレー州の標高1,700メートルの斜面に建つ、15棟のユニークなドーム型の宿泊施設。各客室は木の台座の上に設置されており、室内には薪ストーブ、オーガニックのベッドリネン、バスルームも備え、冬はすべて雪で覆われます。

家具にはリサイクル素材や森林認証材を使用し、テントの中で使用する水は湧き水を使っています。水回りには節水器具やタイマーが取り付けられ、使いすぎないように設計されているとか。提供される食事はすべて、地元の天然素材から作られます。

エコロジーの観点から、宿泊客とスタッフの移動手段は制限されています。車の使用は禁止のため、10分離れたところに停めなければなりませんが、そのぶんポッド周辺は静けさに包まれています。

✔その他のポイント

  • 2005年には環境に配慮した取り組みが評価され、レスポンシブル・ツーリズム・アワード・フォー・イノベーションを受賞した
  • ポッドの冬は雪に覆われ、夏は緑に包まれる。夜間には照明を最低限にするなど、季節に応じて無駄の少ないように外観が調整される
  • ゲストはチェックイン時に地図の入ったバックパック、ヘッドランプ、ステッキを渡され、山を登ってポッドに辿り着く必要がある

 

Trisara(トリサラ)/プーケット、タイ

sustainable-luxury-resort-6_TrisaraTrisara©

敷地内の循環システムを備えるプーケットの高級リゾート。タイ唯一のミシュランレストラン「PRU」を敷地内に持ち、新型ウイルスへの対応にも注目が集まる

開業年:2004年
エリア:プーケット、タイ
運営元:Montara Hospitality Group
公式サイト:https://trisara.com/

プーケット北西部の海岸沿いに位置する、ハネムーンや著名人から人気の高い高級リゾート。一見するとオーシャンフロントのラグジュアリーホテルのようですが、持続可能な未来のための工夫が数多くあります。

インフィニティプールは海から引いた塩水で満たされ、集めた雨水や廃棄処理システムから出た水を組み合わせ、敷地内のファームを灌漑しています。ドアを開けるとエアコンが止まる省エネセンサー、化学薬品を使わない蚊取り線香などの工夫も。

「PRU=Plant Raise Understand」と名付けられたレストランでは、シェフ自ら産地に足を運んだタイ産の食材だけを使うことにこだわり、PRUの価値観に共感したサプライヤーからのみ提供を受けています。

✔その他のポイント

  • 新型ウイルス流行下でタイの観光業界全体が苦戦するなか、Trisaraの取り組みは注目された。2019年に発表し準備中だった「ウェルネス&マインドフルネス」のプロジェクト開発スピードを上げて提供し、自宅でもPRUの料理が楽しめるよう食材やレシピを客に届け、リゾート内で行われるエクササイズクラスをビデオ配信するなど、臨機応変な対応を次々と繰り出したことが評価されている

 

Byron at Byron(バイロン・アット・バイロン)/バイロンベイ、オーストラリア

sustainable-luxury-resort-7_Byron at ByronCrystalbrook Collection©
サステナブルな街の熱帯雨林内にあるラグジュアリーリゾート。ビーチにもほど近い大自然の中、地元食材を使った料理やヨガ、スパトリートメントなどが楽しめる

開業年:2020年(リニューアル)
エリア:バイロンベイ、オーストラリア
運営元:運営元:Crystalbrook Collection
公式サイト:https://www.crystalbrookcollection.com/byron

環境に配慮した街バイロンベイの手前、18ヘクタールもある美しい熱帯雨林の中で過ごせるリゾート施設。92室のスイートルームがあり、そのうち32室は新しく改装されたばかり。

客室のアメニティや設備にも地元由来や天然素材のものを使用し、コートハンガーは100%リサイクル素材で作られています。敷地内のレストランでは、地元の農家や生産者のサポートに熱心に取り組み、食材の80%をリゾートから車で3時間以内の範囲から調達することにこだわっています。

運営元のCrystalbrook Collectionは複数のリゾートを経営し、みつばちのコロニーを所有したり、スタッフの制服を地元のサステナブルファッションブランドのものにしたり、特定商品の売上をワイルドライフ保護施設に寄付したりと、エコ・ツーリズムをさまざまな面から追求しています。

✔その他のポイント

  • スパトリートメントも目玉のひとつ。世界的に有名なスパ専門家が、バイロンベイ地域特有のヒーリング効果を用いた手法で、オーダーメイドのスパを提供する
  • 毎日開催される無料のヨガクラス、熱帯雨林のウォーキング、インフィニティプールやジムなど、アクティビティや設備も充実している
  • 自然を感じられるよう、すべての客室の前後両方にテラスが設けられている

 

考察:“サステナブル・ラグジュアリー”なリゾートをまとめて

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以上、長々と7つのリゾートでした。

リサーチしてみた感想として、最近の“サステナブル・ラグジュアリー”なリゾートは、「マインドフルネス」や「ウェルネス」をキーワードにしているところが多い気がしました。メンタルヘルスプログラムを独自開発して提供していたり、カウンセリングをして個人に合わせたプログラムを組んでくれたり。

リゾートに求めるものが、少し精神面に寄ってきている印象です。コロナの影響もあって、地球のサステナビリティはもちろんのこと、人間のサステナビリティも考える流れになってきているのかもしれませんね。

だからこれまでのラグジュアリーリゾートのように浪費・豪遊するような贅沢ではなく、滞在スタイルは豪華でありながら素朴で質素でもあります。お金を払って来ているお客さんに、節水や消費制限をさせるのも面白いですよね。

地産地消など、ローカルで完結させようという傾向も強いです。建築材の一片までも地域内からの調達にこだわるところもあります。料理はもちろん地元の食材で。やはりどんな高級食材をトップシェフが調理するより、採れたて野菜のみずみずしい美味しさこそが最強ですよね。

個人的には、どんどん消費が本質的なものになっていって、とても嬉しい傾向だなと思いながら見ています。いつか渡航が気軽にできるときが来たら、ぜひ現地にも行ってみたいですね!

おわり。

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