飲食店の取材対応。当日のお店でやるべきことのすべてと、よりよい露出にするための小ワザを紹介します。
飲食店のPR担当として、これまで500件くらいの飲食店取材に立ち会ってきました。
対応した内容は、テレビのグルメロケ、タレント入りの食レポ、ドラマやCM撮影、グルメ雑誌から女性誌まで、フリーペーパー、WEB、動画メディア、ラジオ、海外の情報誌、などなど。
すべてに共通する取材当日の流れについてまとめます。※個人店でも参考になると思います。
飲食店取材当日、お店での流れ
事前に担当者さんと決めた日時にお店に行きます。取材の流れを時系列で見ていきます。
10分前には準備OKにして、取材概要を確認
早めに来るメディアが多いので、伝えた時間の10分前には作業を終えて、スタンバイOKにしておきます。
内観写真を撮る場合、店内をキレイに。特にキッチンまわりはごちゃごちゃしていることが多いので、雑多な感じが映らないように整えましょう。
取材に対応される方は、概要をもう一度確認。メディアからもらっている企画書や資料を見ておきましょう。
メディアの方が来店したら
メディアの方が来たら、まずは空いている席に荷物を置いてもらいましょう。
カメラ機材は重いので、挨拶よりも先に荷物置き場を案内します。そのあと名刺交換をしておきましょう。(事後の連絡先は必ずもらうこと!)
カメラのセッティングと撮影順の確認
流れを確認しつつ、撮影する場所を決めます。
料理単体の写真・映像を撮る場合、光の入り具合やスペースの状態などで、撮りやすい場所があると思います。カメラマンさんに希望を聞きましょう。
カメラのセッティングには時間がかかるので、すぐに設置しはじめてもらいます。そのときに、撮影予定の料理を盛るものと同じ空のお皿を出してあげると、構図の調整がしやすくなります!
料理の撮影はできたてが命
食べ物は、時間が経つにつれて変化していく被写体です。
料理撮影は時間との勝負。できたての一番美しい状態で撮ってもらえるよう、出すタイミングをコントロールします。
料理1品ができるまでに平均的に10〜15分ほどかかるので、キッチンスタッフに確認し、よきタイミングで出るようにオーダーしましょう。
いくつかの種類を撮る場合は、同時に出てきてしまったり、1つ目の撮影中に2つ目が出てきてしまったりするのも困ります。逆に、あまり間が空いても無駄な時間が増えてしまう……。
1品ずつフレッシュな状態で、テンポよく撮ってもらえるよう、時間を先読みしてオーダーするのがポイント。
インタビュー取材は席に座って
インタビューがある場合、座ってドリンクをお出ししましょう。
こういうところにも飲食店のおもてなし精神が出ます。取材もおもてなしですので。
普通のお茶などでいいですが、せっかくなのでお店のおすすめをお出ししてもいいですね。気持ちよく取材してもらえることを考えたら、たいした費用ではない気がします。
個人的には、こういう対応もPR(パブリック・リレーション)のひとつかなと思っています。メディアの方も人間(=見込み顧客)なので、「いいお店だったな」「プライベートで今度来よう」と思ってもらえたりしたらいいですよね。
取材に関係ある料理は試食してもらう
料理のこだわりなどを深く聞いてくれる取材であれば、料理を少しお出ししながらの取材もありです。
そのほうが印象に残りますし、記事などを書いてもらうときにイメージが膨らみます。
メニュー表は、資料用としてスマホで撮っておいてもらいましょう。あとから値段の確認などをしなくて済むので、お互いにとってラクです。
改めて、必要素材の確認
話のなかで、あとで送る画像や情報が出てきた場合は、インタビュー後に改めて確認しましょう。
また、撮ってもらった写真も一応見せてもらえるといいですね。変なものが写り込んでいないか、確認しておきましょう。
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当日の流れはこんな感じ。原稿チェックをさせてもらえる媒体の場合、そのスケジュールも抑えておきましょう。
取材前に知っておきたいグルメ撮影用語
テレビ撮影の場合、グルメ撮影にはいくつか決まった撮り方や用語があります。参考までに。
物撮り(ブツドリ)
静止物を撮ること。小物でも商品でも使われますが、グルメ撮影の場合は料理を単体で撮るときに使われます。
ほとんどの取材で物撮りが入ると思いますので、物撮り用スペースを確保しておきましょう。
箸上げ
よくテレビで、お箸でラーメンとかを持ち上げてしばらくプルプルしている映像がありますよね。あれを「箸上げ」といいます。
「箸上げ」はディレクターやADさんが行うことが多いのですが、この腕が地味に試されます。。
いかに彩りのある具材を一緒に持ち上げ、数秒間1粒のお米も落とすことなく、プルプルしないでいられるか。ここからグルメ番組ADの修行ははじまるのですね……
割り
「割る」動作です。
肉まんみたいな中身のある食べ物や、断面が美しいパンなどは、カメラの前で割ってみるとより美味しそうに撮れますよね。
上にのっている卵をお箸で割る……とかもあります。
メディア側から提案してくれることもありますが、自分のお店のメニューが一番美味しそうに見える撮られ方は考えておきましょう。
湯気出し
あたたかい料理は、湯気が出ていたほうが美味しそうに見えますよね。
湯気を意図的に出すことを「湯気出し」といいます。
これはあまりお店のロケでは使われないのですが、CMや広告の撮影では、ドライアイスを使って湯気っぽく演出することもあるんです。
ちょっとお店でやるのはご遠慮いただきたいですが笑、知っておいて損はないと思います。
インサート
インサート=挿入、挟み込む、といった意味ですが、VTRのなかに挟み込まれる映像のことです。
たとえばタレントが街歩きするロケなどでは、タレントが止まらずに動いているので、内観・外観や料理の撮影をいちいちしている時間がありません。
その場合、ロケ日は名刺だけ渡しておいて、後日インサート撮影を行ったりします。
シズル、シズル感
たぶんもう説明の必要がない「シズル感」。
料理の撮影は、いかにシズル感を出せるかが勝負です。自分のお店のメニューなので、どう撮ってもらえば一番シズるかは自分たちが一番わかっているはず。
美味しそうなタレのつけ具合とか、店内で“映える”場所とかね。引かれない程度に提案してみてもOKです。
寄り/引き/抜け
カメラが寄ったり引いたり。
寄りで撮ったり引きで撮ったりしますので、後ろに下がれるスペースを確保しておきましょう。
「抜け」は、カメラに映したときの背景のこと。抜けにさり気なくメニュー看板などを入れてアピールしちゃいましょう。
取材慣れした飲食店がやっているテクニック
広告用撮影などで使うテクニックですが、中でも個人店でもすぐに取り入れられる簡単なものを紹介します。
より美味しそうに撮ってもらうべく、取材慣れしている飲食店はいろいろ小ワザをもっているものです。余裕があればトライしてみましょう。
油を塗ってテカリを出す
つやつやしているほうが美味しそうに見える料理の場合、調理後にハケで油を塗ることでシズル感が出せます。
霧吹きで水をかける
サラダとか、みずみずしさを出したい料理なら、霧吹きでシュッと水滴をつけることでフレッシュ感が演出できます。
タレなどを少し多めに
お客さんに出すときもタレやソースはたっぷりめで。最上級に美味しそうな見た目を追求しましょう。
あえて味付けをしない
撮影用なので、見た目ができればOKなんです。
残念ながら、どうせ撮影後にはカピカピに冷たくなってしまいます……。少しでもフードロスを軽くすべく、調味料などは使わない場合も多いです。
見えない食材は使わない
上に同じく、パッと見たときになくてもわからない食材(下のほうにあるとか、混ぜちゃうとか)は、使わないで作ってもOKですね。フードロスを減らしましょう。
自然光が当たる席を確保しておく
食べ物は自然光のもとで撮るのが一番なんです。
特にWEB媒体などだと、ちゃんとしたカメラや照明機材をもってきておらず、ライターさんが小さめの一眼レフで撮るケースも多いです。
自然光の差し込むいい感じの席を確保しておきましょう。
室内の温度を少し低めにしておく
先ほど書いた「湯気出し」に関連しますが、湯気を出すためのテクニックとして「室温を下げる」というのがあります。
少し寒めの空間にアツアツの料理を運んでくると、キレイな湯気が出せて美味しそう感120%です。簡単でおすすめのテクニックです。
一番美味しそうに見える角度を知っておく
お高めの雑誌の場合、プロのフード専門カメラマンさんが来てくれることもあるのですが、ほとんどの場合そんなことはありません。
自分のお店の料理が一番美味しく見える角度や撮り方はなんとなくわかると思います。これ、けっこう大事です。
取材にかかった料理代金はどうする?
「取材で出した料理の代金を取るかどうか」というのは永遠の課題ですね。
最近は企業の決まりが厳しいのか、きちんと払って領収書をもらっていくメディアが多い印象です。ただし、フリーライターさんなどは自腹でやっていることもあり、人によってまちまちですね。
サービスしてあげてもいいですし、逆にしっかり取っても拒否されることはないと思います。これは本当にお店の性格次第です。高級店だと話は別ですが。
ただ、取材してもらうだけでメディアに出られるってことは、広告費と比べたら安いものですよね。
個人的には、投資と思って出しておいてもいいのかなーと思っています。まあぶっちゃけ、メディアの価値次第ですね!そのへんの話はこちらの記事に書いたのであわせてどうぞ。
飲食店の取材はむやみに受けると大変なことになるケースもあるので、リスクも知った上で受けましょう。
取材する側もされる側も、気持ちのよい取材になるといいですね!
おわり。