「在宅でもこんなに仕事が回るんだから、フルリモートワークのまま海外移住もできそう」
コロナによる働き方の変化で、こう考える人も増えてきたと思います。私のまわりでも海外に出ていく人が増えてきました。
これまではなんだかんだ言って、フルリモートで海外移住といえば自営業者やフリーランスが多かったですが、最近では会社員でも考えられるようになっています。一方で、日本特有の制度やガラパゴスな文化により、知っておいたほうが苦労しないだろうなと思うこともあります。
私は5年ほど前から海外フルリモートワークでの働き方を取り入れてきました。2019〜2020年は海外に住み、リアルな課題にも向き合ってきたので、自分の経験から今だからこそ伝えられることをシェアします。
これから海外フルリモートワークに挑戦してみようかなと思う人は参考にしてみてください。
Contents
私の海外リモートワーク遍歴
はじめに、私自身の海外リモートワーク遍歴を簡単に紹介します。
大きく分けると、2017年頃から以下のような流れでやってきて今に至ります。
- フリーランスになり仕事をもって短期間海外へ
- マレーシアに1ヶ月ほど家を借り住んでみる
- オーストラリアの都市を転々としながら日本と行き来
- オーストラリアの小さな街に拠点を構えフルリモート
- 帰国して日本の海沿いの小さな街からフルリモート
※2022年現在は日本を拠点にしています
2017年はまだ今ほどリモートワークが普及していなかったので、フリーランスとして場所と時間の自由を効かせつつ、独自ルートでこっそり実験していました。初めて1ヶ月マレーシア・クアラルンプールにコンドミニアムを借りて住めたときは「いけるじゃん!」て感じでした。(移住シミュレーションを入念に)
コロナ禍の前半は日本に帰れなかったので、そのときに海外フルリモートもメリット・デメリットや、リモートワークで生産性を上げるコツ、海外からリモートで広報業務をやるTipsなどの記事も書いています。(最後にリンクを貼っておきます!)
職種はPR・コミュニケーション系で、広報、コンテンツ制作、プロジェクトマネジメント、Web制作、編集、ライティング、マーケティング、翻訳、コーポレート関連などを幅広くやるジェネラリストで、受託仕事よりはチームに入ってディレクション役をすることが多いです。仕事先は日本企業をメインに海外企業もたまにあり。
在宅ワークだから海外へ、は簡単にできてしまう
今は発信している人もたくさんいるし、在宅ワークを海外からする選択肢も見えやすくなってきました。
毎日オンライン会議に参加する家が東京からニューヨークになっても、インターネットがあって時差さえ乗り越えられれば、下手したら誰にも気づかれないかもしれない。数ヶ月単位のお試し移住は、誰でもできると思います。
リモートワークの本質的なメリットは「移動時間が減って効率的」といった表面的なものよりも、「世界中の人材が採用対象になる」ということなので、英語が公用語のグローバル企業ではすでに定着しつつあります。勤務地のフィルターをなくし全世界から優秀な人材を集められることのメリットは計り知れないので、この流れが逆戻りすることはなさそうです。
いろいろとクリアにしなければならない問題はありますが、物理的なところだけ考えれば「在宅ワークだから海外に行ってみよう」は簡単にできます。
日本企業で正社員として働きたい人にはハードルも
ではその海外リモートワーク、現実的にどうやるかの選択肢としては、大きく以下の3つにわかれます。
- フリーランスになるか起業して自分で道を作る
- 勤務中の会社に海外フルリモートを提案・交渉する
- 海外フルリモートに寛容な会社に転職する
①は今までもいましたが、コロナをきっかけに増えていくのは②や③のパターン。会社員でも海外フルリモートに挑戦しようとする人が出てきています。
海外から日本企業と仕事をするにあたり、ビザや税金などが①だとクリアしやすいところ、②や③だと会社側の制度ともご相談になるため少しハードルがあったりします。しかし逆にいえば、会社の制度がそういった働き方に寛容なら、自分にとってプラスに働くこともあります。
これから説明していくようなことを知ったうえで、自分にあったスタイルを見つけていくのがおすすめです。
避けて通れないのがビザの取得
海外に長期で住みたいと思ったとき、必ずいるのが有効な「ビザ=滞在許可証」です。
どんなビザがあるのかは国によっても全然違い、ビザの世界だけで1記事語れるほど、かなーり複雑です。
- 観光客でも取れるツーリストビザ
- 勤務先がサポートしてくれるビジネスビザ
- 結婚などで申請できるパートナービザ
- その他、リモートワークビザなど
思い切ってざっくりわけると、上記のような種類があり、ビザの種類によって滞在が許可される期間も違います。数ヶ月〜半年くらいのお試し移住であれば、日本に居住したまま「旅しながらリモートワーク」をしているだけという観光扱いで滞在できる国も多いです。いきなり「永住権」はまず無理なので、「移住します!」と宣言していてもまずは半年の観光ビザから、というパターンも珍しくありません。
それ以上となると何かしらのビザが必要。会社都合の長期出張や駐在なら、会社がビザサポートをしてくれるのですが、自分の都合で海外リモートワークをしたい場合はそうはいきません。それどころか、日本の仕事をしている以上、現地のビジネスビザ取得を目指す道はほぼ閉ざされているので、他の手段を探さなければなりません。
基本的に国が移住者にビザを発給するのは、移住先の国になんらかの利益をもたらせると判断した場合です。海外フルリモートで日本の仕事をしているとそのポテンシャルが薄いので、長期的に考えると不利かもしれないことは知っておくといいかなと思います。
SNSではふらっと海外移住していくように見せている人も、途中で切り替えたり更新したりしながら、実はビザに関してはとても戦略的に頑張っています。最近はリモートワーカーに向けたビザを設ける国も出てきているので、変わってくるかもしれません。
フリーランスと会社員で違う税金・保険のこと
ビザ以上に情報が隠れているのが、税金に関すること。
国家間が締結する租税条約というものがあり、世界全体でうまくやれる仕組みになっているのですが、“リモートワーク”という新しい働き方には制度が追いついていない部分が多く、ちょっとややこしい。
国内居住者と国外居住者で税金の扱いは変わるのですが、海外に住んでいても日本に拠点や住所があれば国内居住扱いで処理することもあるし、住民票を抜いていたとしても税処理上は国内居住者として扱うケースもあります。海外からの所得もある人だとさらに複雑に。所得は基本的に「仕事をした土地」での所得となるので、たとえば海外居住の芸能人が日本に帰国してテレビに出たりすれば、それは国内所得扱いになったりするのです。
しかしリモートワークのように「仕事をした土地」そのものが存在しないケースでは、一体全体……?税理士さんでも意見がわかれるケースが増えているのが現状です。
日本企業に雇われている場合、制度がしっかりしている企業ほど、新しいパターンをどう扱えばいいかの制度づくりが大変で、許可が降りないケースもあると聞きます。会社側としても、社会保険をどうするか、源泉徴収をするのかどうか、わからないことだらけ。自分の扱いのことは自分で調べて、会社に「こうすればいけますよ」と提案して、新しい道を作っていくくらいの気概が必要かも。
税金のことは人それぞれ状況が異なるので伝えられるのはこれくらいになりますが、知っておかないと個人レベルで損をしてしまうこともあるので、しっかり理解しておくのがおすすめです。
海外リモートワークで英語を伸ばすには努力が必要
なんだか忠告ばかりで萎えてきますが、「“現実的に”海外フルリモートワークを考える」のがこの記事のテーマなので、もう少しいってみます。
みんな気になる「英語」について。
英語圏の国に移住したい場合、「あわよくばリモートワークでお金を稼ぎつつ留学体験ができるかも」と期待しているかもしれません。しかし私の経験上、海外リモートワークをしながら英語力を思うように伸ばせている人には、あまり出会ったことがありません。
- 1日の大半を占める「仕事」がすべて日本語
- 在宅リモートワークなので外に出ることも少ない
- 現地で仕事をしないと地域との接点も作りづらい
こういう状況になり、想像以上に英語を使わなくても生きていけてしまいます。
なんなら、最近はテクノロジーのおかげで、英語を一切しゃべらなくても生活ができます。若かりし日に誰もが勇気を出してトライした「マクドナルドでの注文」も今やタッチパネルで秒で完了するし、デリバリーを使えば誰とも接さず食事が完結。
大人になってから高いレベルの英語力を身につけた人の多くは、人生のどこかで「英語漬けになって夢まで英語で見る」という期間を経ています。リモートワークをしながらでは、勉強に当てられる時間も限られ、何より脳内の思考がどうやっても日本語中心になってしまうので、なかなか苦労するかもしれません。
時差と気候によるメンタル問題、異国で暮らすアイデンティティ問題
最後に……。海外リモートワーク経験のある友人とはだいたいわかりあえる、長期滞在ならではの注意点をお伝えしておきます。人間の生命の根幹に関わるところなので、大事なことです。
時差を侮るなかれ
日本在住者とのコミュニケーションが多い仕事で時差の大きい国に住むと、深夜や早朝にミーティングすることが多くなります。これが実際やってみると結構キツい。睡眠時間が安定せず生活習慣が崩れると、自分では大丈夫と思っていても心身にダメージがあります。これで身体を壊してしまった海外在住リモートワーカーも知っています。
私は何度かのお試し渡航でそれが無理と気づいたので、時差が1〜2時間のオーストラリアを選びました。個人的にはせいぜい±3時間までだなと思うので、それ以上の国に行きたいなら働き方を変えることも検討してほしいです。
気候はメンタルに直撃する
「ヨーロッパの冬は鬱になりやすい」などはよく聞く話。気候は人によって相性というのが本当にある要素です。年中温暖で快適といわれる東南アジアの気候も、人によっては蒸し暑さがエンドレスに続く地獄に感じるかもしれません。気候ってとてもベーシックなものだから、生物としての人間のメンタルを左右しやすい。
最近は気候変動による自然災害が深刻な地域も増えているので、その観点からの土地選びが重要になってきそうです。私もオーストラリア東海岸で森林火災や豪雨・洪水にかなり翻弄されました。気が滅入るのもありますが、インターネットが遮断されてしまったりと仕事環境に直接的に影響することもあるので、気候のチェックはとても大事です。
いつか必ずぶつかるアイデンティティ迷子
今(2022年)の段階でフルリモートワークでの海外移住を検討している人は、今まで日本での仕事を頑張ってきていて、それなりに築いてきたキャリアや自尊心がある方だと思います。そういう人こそ直面しやすいのが、「仕事的なもの」を通して社会・地域コミュニティと繋がりづらいことによる、自らのアイデンティティや存在意義という面での課題。
この話は長くなるのでここでは簡潔にしますが、要は、自分が持つ100%の能力を発揮できず、自分が住み生きている土地とのコネクションを作りきれない状態で、遠く離れた日本のことばかりずっとやっている日々が、だんだんしんどくなってきます。
「日本は未来がないから、海外に出ればいい」なんて論調が出回っていたりもしますが、しばらく住むとそれがどれだけ安易で視野の狭い考えか、地球規模で考えるようになってくると思います。そして自分の無力さや“外国人”として生きる辛さを感じ、病む人も。
まあそれを実体験を通して感じるためにも、行きたいと思ったときが行き時なので、とりあえず移住してみてもいいのかなと思います!
海外フルリモートの求人が多いのはエンジニア、オンラインアシスタント等
長くなりましたが、在宅ワークがフルリモートでできているから海外移住しようかな?と考えている人に、とても現実的なあれこれをお伝えしました。検討の参考になれば嬉しいです。
増えてきているとはいえ、やっぱり海外フルリモートの求人が多いのは、エンジニアやオンラインアシスタントなど、従来からリモートのみで完結するタイプの職種。
一方で私は、なかなかリモートが難しいと言われるコミュニケーション職種でやっていたので、その具体的な方法やTipsなども見てみてください。
新しい選択肢もうまく活用しながら、自分なりのキャリアを見つけられるといいですね。
▼海外からフルリモートワークしてた頃
▼noteの記事も好評でした
» 海外からフルリモートでの仕事は、こんなふうにやってる|RYOKO
» PR広報の業務をフルリモートで成り立たせるための10の心構え|RYOKO
おわり。