最近、採用・人事・HR界隈でよく聞く言葉に、「アルムナイ」というものがあります。
アルムナイ(英:alumni)とは、もともと大学などの「卒業生」という意味。転じて、企業の退職者・卒業生を指す言葉として使われています。
つまり会社を辞めてしまった人のこと。これまでは「辞めたら終わり」だったのが、辞めたあとのさまざまな活用方法が注目されるようになっているんです。外資系コンサルなどを筆頭に、海外では当たり前の考え方になりつつあります。
これから流行りそうで個人的に気になっているので、アルムナイやアルムナイ・リレーションズについてまとめます。
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アルムナイ(=alumni)とは?
意外と知らない人も多いのですが、alumniは卒業生・同窓生という意味の英単語です。
日本ではOB・OGと言ったりしますよね。それと似たような意味です。海外の大学では日本以上に母校愛が強いので、卒業後も「alumni」同士ということで繋がりが生まれたりします。
出典:The University of Mississippi
「アルムナイ・ステッカー」の文化があって、アメリカ郊外では車のバンパーにこんなステッカーを貼っている光景を見かけます。これがきっかけで、立ち寄った場所で話しかけられたりすることもあるとか。
「アルムナイリング(指輪)」というのもあります。卒業時に自分だけのデザインで注文して作り、ずっと大切に着ける人もいます。
大人になっても、ビジネスシーンでこれらのアイテムをきっかけに話が盛り上がったりするみたいです。愛校心の表れですね。
アルムナイは企業にも。外資系コンサルでは一般的に
そんな、欧米で一般的な「アルムナイ」の文化が、企業にも使われるようになりました。
定年前に辞めてしまった退職者(離職者)のことを指していて、外資系コンサルでは「アルムナイ制度」というのがあり、同窓会も頻繁に開かれるなど、アルムナイ・ネットワークの構築に一生懸命です。コミュニティ化しているので、卒業してもずっとその会社とのつながりを持ち続けるのが普通です。
Accenture(アクセンチュア)などは特にすごくて、「アルムナイ」の専用サイトがあるくらいです。
» アクセンチュア・アルムナイ|アクセンチュア – Accenture
アクセンチュアを卒業し、新たな舞台でのキャリアを歩み始めた元社員もアクセンチュアにとって大切な家族の一員です。だからこそ私達はアクセンチュア・アルムナイ・ネットワークを通じて世界中のアクセンチュア卒業生と強い関係を維持しています。
現在40以上の国と地域で200,000名のメンバーが登録していて、年間150以上のイベントが開催されているそうです。ハンパないですよね。卒業してもみな家族。
▼動画の要約
- 世界中のアクセンチュア・アルムナイと興味やスキル、人脈をシェアできます
- 元同僚はもちろん、会ったことのないアルムナイ同士のコネクションもできます
- アルムナイを通じて仕事を見つけることもできるかも
- またアクセンチュアに戻りたければ、いま応募可能な職種も見つかります
- アルムナイ限定のスペシャルオファーもいろいろ受け取れます
わかりやすい動画もあって、要約するとこのようなことを言っています。アクセンチュアのアルムナイ・リレーションズへの力の入れっぷりが伝わります。
日本企業では「リクルート(元リク)」や「Yahoo!(モトヤフ)」が注目
日本では2018年現在ようやく「アルムナイ」という言葉が採用界隈で聞かれるようになってきたばかりですが、それらしい取り組み自体は少し前からありました。
たとえばリクルート。リクルートは「卒業後の活躍」にフォーカスが当たっているようなところがありますよね。元リクの起業家排出率はすごいです。
他にも、ヤフー株式会社は会社が公式に非公開Facebookグループを作り、アルムナイ同士が自然とつながれるような仕組みをつくっているんです。
こんな取り組みもあるとはいえ、まだそんなに一般的ではない様子……。これから「アルムナイ・リレーションズ」が活性化していくことでしょう!
アルムナイが注目される理由は?活用方法は?
私自身も転職歴があるので、とある会社の「アルムナイ」です。自分の経験でいうと、アルムナイとしての関係構築はわりと良好ですね。
前の会社とはそこそこよい関係で、当時お世話になった先輩とときどきランチに行ったりもしていますし、直接の取引でなくても仕事上でかかわったり、人を紹介したりされたりということがたまにあります。
アルムナイに注目が集まっている理由はまさにこれで、辞めたからといってプツンと関係を切ってしまうのではなく、良好な関係を築いておくことで、双方にいいことが生まれるからです。
具体的には、
- アルムナイの再雇用(出戻り)
- 外注・フリーランスとしての仕事発注
- アルムナイ経由のリファラル採用
- アルムナイの転職先との取引き
- アルムナイの企業アンバサダー化
などなど。挙げるとキリがないくらい、アルムナイの資産力は計り知れません。
「イグジット・マネジメント」なんていわれますが、「辞め方」って大事ですよね。その会社にずっと忠誠を誓って尽くしてきたとしても、辞めるときに揉めてしまったらそれっきりということもあります。
辞めてから関係づくりを頑張るのではなくて、働いているときや入社前から退職後のことを考える。いずれ「アルムナイ」になるときのことを考えて、採用前から退職後まで一気通貫でよい関係の築き方を考えていきましょうよ、というのがアルムナイ・リレーションズの考え方です。
もはや「退職」したことのない人のほうが珍しい現代。最初から辞めることを見据えて採用する、そんな時代になってきたのですね。
終身雇用崩壊のいま注目される、アルムナイ・ネットワーク
終身雇用はほぼ崩壊したに等しいので、企業とアルムナイとのリレーションづくりはもちろん、アルムナイ同士のネットワーキングも盛んになってきています。
注目が高まっているのが、退職者同士の「同窓会」。アルムナイミートアップ、アルムナイトなどと呼ばれ、企業主催で行うケースが増えています。
2018年7月には、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」にも取り上げられ、三井物産の同窓会が紹介されています。以下引用。
国内では転職市場が急拡大していて、転職サイトの登録者数の伸びは、およそ10年で6倍を超えています。そうした中、いま「アルムナイ」という言葉が注目されています。「アルムナイ」とは同窓会や同窓生を意味する言葉で、会社を辞めた後も元社員同士で交流を続けるケースが増えているというのです。そこに企業側も新たなビジネスチャンスを見いだしていました。
下記のサイトで詳細が見られます。
» 企業が「アルムナイ」に注目するワケ
» [WBS] 「離職者の同窓会」に企業も注目!?元三井物産社員が370人も入会!
アルムナイはかつてはその会社にいた人なので、ゼロベースから採用するよりもミスマッチが起こりにくい。自社のことを知っていて関係性ができているので、再構築もしやすいです。お宝ですね。
こんな貴重な資産であるアルムナイを「退職は裏切りだ!」と言ってみすみす逃していたなんて、今までなんてことをしていたんでしょうね。
まとめ:退職=裏切りの時代は終わりました。
アルムナイが今注目されている理由としては、
- 終身雇用が崩壊し、人材が流動的になっていること
- 労働人口が減っており、慢性的に人手が足りてないこと
のふたつが主なものです。
これまでは転職回数が多いと「ジョブホッパー」なんて揶揄されることもありましたが、もう今の時代は定年までひとつの企業に勤め上げることのほうが稀です。
最近は、転職・退職を前提としてキャリアパスを描くようになっています。転職して当たり前だし、ずっと同じ企業に居続けることがむしろ停滞と取られたりもする。
アルムナイとの関係性はこれから超重要になっていくはずです。
日本でもアルムナイ向けのサービスが出てきたりしているみたいなので、要チェックです〜。私もPR(=Public Relations)の一貫として、Alumni Relationsに引き続き注目していきたいと思います。
▼採用向けスカウトメッセージの書き方とかもまとめてます
おわり。