「取材拒否の店」というのを聞いたことがありますか?
文字通り、テレビをはじめとしたメディアによる取材を一切受けない飲食店のことです。
取材されれば番組で紹介されて、広告を打ったわけでもないのに認知度が上がって、お客さんも増えて万々歳!となるはずなのに、拒否する理由はなんなんでしょうか?
PR担当として飲食店取材をアレンジしてきた経験から、取材を拒否する理由についてお話します。
Contents
取材拒否する理由【取材前・取材当日・取材後】
拒否する理由は、取材前・取材当日・取材後のすべてにあります。
世の中の影響力が大きい取材後ばかりが注目されやすいのですが、実はその前からけっこう大変なんですねー。。
【取材前】調整にかかる工数を考えて
飲食店にテレビ取材が入るとき、普通はまずADさんから電話がかかってきます。
企画内容や取材で撮りたい映像などを伝えてくるので、メールやFAXで詳細を送ってもらい、内容を詰めていく……という流れです。工程を決めたりメニューを決めたり、事前の準備にけっこう工数がかかります。
- 電話やメールでのビジネス的なやりとりに割く時間
- 取材のためにスタッフを手配する手間
- スタッフの人件費や取材にかかる費用
このあたりがかかってくるコスト。通常営業の合間にやるのが大変だと、取材を受けるのもちょっと躊躇してしまいますよね。
アイドルタイム(ランチとディナーの間)に取材が入るならまだいいのですが、閉店後に取材を受ける場合はスタッフの手配も必要です。【深夜料金のバイト代+タクシー代】が発生することもある……。
取材自体にお金はかからないとはいえ、そういったコストを考えるとメディアバリューが釣り合わないケースもあったりします。
【取材当日】現場の混乱を考えて
これは特に、営業時間中にタレントが来るような撮影の場合です。
店舗紹介だけのシンプルな番組なら営業時間外にできるとしても、街歩きロケのような番組の撮影だと営業中に行います。
グルメロケでスター級の芸能人がくることは少ないですが、有名人は有名人。撮影中は人だかりができたり目立ったりで、とても通常通り営業できるような状態ではありません。
近隣の住宅や店舗にも迷惑がかかるし、お店に来てくれたお客さんも嫌がるかもしれない……。事前に撮影日の告知もできないので、ふらりと来てくれた常連さんを追い返すことになってしまう……。
こんなリスクもありますよね。
私も実際にロケ中にお客さんからクレームが入ったことがありますが、飲食中にゴツいカメラを持った人が出入りしたので「自分も撮られているんじゃないか」と気を悪くされたようです。
せっかくの楽しい食事を、邪魔されたらたまりません。撮影を野次馬的に楽しめるお客さん、本気で嫌がるお客さん、様々いらっしゃるので、その配慮が大変です。
【取材後】反響の大きさを考えて
これが一番大きい理由です。
テレビでO.A.されると、少なからず影響はありますよね。放送当日にどっとお客さんが押し寄せることもあるんです。
気をつけないといけないのは、テレビを見て来る人というのはたいていミーハーで、リピーターにはなってくれない一見さんということです。
一時的には盛り上がるかもしれませんが、そのせいで常連さんが入れずに離れていってしまうリスクがあります。
また突然お客さんが一気に増えると、
- 人手が足りなくてお店が回らなくなる
- 食材の発注バランスが崩れてしまう
- 忙しすぎてスタッフが辞めてしまう
という可能性も考えられますよね。
さらにそのせいで接客の質や味が落ちると、悪い口コミが広がってしまうこともあります。常連さんも「このお店も変わっちゃったね」と去っていってしまうかも。
スタッフはやめるわ、経営はぐちゃぐちゃだわ、気づいたら常連はいなくなってるわ……。テレビ放映後の集客は台風みたいなもので、嵐が過ぎ去ったあとのお店は虚しいですよ。。
「取材拒否店」はどんなお店に多いのか
「取材拒否店」と聞くとかなりの高級店とか、お店の主が堅物なお店を想像するかもしれません。実際は、以下のようなお店が多いです。
十分儲かっている人気店
既に十分に集客ができていて利益も上がっているお店だと、わっと新規客増えたところで対応できる余地がありません。
人気店ほどメディアからの引き合いは多いのですが、行列ができて混乱するのが目に見えているので、こういうお店は断ります。
家族経営など規模の小さいお店
夫婦でこじんまりとやっている小さな定食屋さん、などは、人員不足を理由に取材を断っているケースが多いです。
大変なわりにメリットが少ないことがわかっているので、それよりはコツコツ安定して料理をつくって、いつものお客さんを大切にしましょ、ということですね。それも素敵です。
味へのこだわりが強いお店
味にこだわりが強いとテレビ取材を受けたがりません。
なぜなら、テレビで味は伝わらないから……というのも半分くらいありますが、それ以上に「ミーハー客に変な評価をされたくないから」です。
テレビを見て来ました〜!という人の舌が肥えている確率は低いので、口コミで「期待したほど美味しくなかった」とか書かれたらたまりません。
イメージコントロールのためにあえてメディア露出を抑えるのも、立派な広報戦略ですね。
客単価が高いお店
単純に「高級店」は、取材のハードルも高いです。
テレビって基本的に庶民がターゲットのメディアです。特にグルメは、見た目重視でバラエティ的な扱いをされやすい。。
あまり自分たちのお店のターゲット層にあうような人が見ていないから、出すメリットもないよね。という感じです。
余談ですが、高級店は「富裕層だけが購読できるクローズドマガジン」とかに掲載してもらったりして、客層コントロールをしているんです。
最後に:老舗和食店の店主から聞いたリアルな話
実体験として、老舗和食店の店主から聞いたリアルな話で締めたいと思います。
このお店の客単価は夜で8000円ほど。店内は狭く、予約しないと入れない高級店です。それでもメディア取材を受けたことが何度かあり、ひどい取材もたくさんあったそうです。
- 取材に来るといった時間は守らない
- その後のやりとりも遅い
- 撮ると聞いていないものを撮りたがる
- O.A予定日は何度もずれる
- 放送を見てみたらほぼカットされてる
など。。ひどいですね。
逆に、いい取材もあったそうで、そのときはいいお客さんが増えたと言っていました。
飲食店さんのなかには、初めての取材で苦い経験をして以来、それがトラウマになって受けるのをやめてしまった……という人もいます。
企画書から内容を読み取ってうまく判断できれば、テレビ取材をうまく利用することもできます!戦略的にメディア露出をしてブランディングにつなげましょう。
▼テレビ取材を受けるリスクについても書きました
▼取材を受けるかどうかの判断はこちら
▼受けるとなったら、当日気をつけるべきこと
おわり。