スタートアップ企業が新しいサービスをローンチするときには、プレスリリースを配信してPRをしっかりしましょう。ビジネスは初速が肝心!
調べるとプレスリリースはたくさん出てきますが、スタートアップは大手企業のマネをするだけでは上手くいきません。スタートアップにはスタートアップなりの手法があります。
この1年ほど様々なスタートアップ企業さんのPRを手伝わせていただき、いろんなことがわかってきました。そのノウハウを詰め込んだ「スタートアップ企業のためのプレスリリースマニュアル」を公開します。
プレスリリースの書き方から配信のあれこれまで全部わかりますので、ぜひご活用ください〜。
※この記事はWEBサービスを扱うスタートアップ企業を対象にしています
★プレスリリースについては全10記事以上でまとめていますので、しっかり学びたい人は下記の記事からどうぞ。
Contents
スタートアップにとってなぜプレスリリースが大事なのか
スタートアップ企業の場合、「社長+エンジニア数名」みたいな人員構成でやっている場合も多いですよね。当然PRに詳しい人はいないので、経営者自身やちょっと文章のうまい人が見よう見まねでプレスリリースを書いている……という話もよく聞きます。
まずは開発!ごりごり開発!余力があればPR!という感じだと思いますが、ここでプレスリリースの大切さがわかるお話をひとつ。
» 製品開発より先にプレスリリースを書いてみるのがAmazon流
Amazonでは、先にプレスリリースを作ってしまって、そこを起点にプロダクトを開発していく手法を取っています。
具体的な製品開発プロセスにこぎ着ければ、プレスリリースは試金石になる。迷いが生じたら「プレスリリースに書かれている製品を作っているか?」と自問してみる。プレスリリースに書かれている製品と乖離しているようなら、ユーザーの利益につながる製品から離れていることを意味する。すぐに原因の究明と修正を行う。
プレスリリースとはメディア向けに送る文書のこと。メディアが発した情報が、ユーザーとなりうる生活者との接点になります。
受け手がどう感じるかを想像してプレスリリースに落とし込み、そこから製品をつくっていくことで、世の中から共感を得られる製品を生み出すことができるんです。
プレスリリースを先に書いておくことで、チーム全員が立ち帰れるゴールとしても機能してくれます。
Amazonのような偉大な企業を目指して、プレスリリースの立ち位置を見直してみましょう!
プレスリリースのメリットはメディア掲載のみならず
初期のスタートアップでは、チーム内でのイメージやゴールの共有が超大事ですよね。
端的にサービスの特徴を言語化することは、チーム内で考えを整理することにもつながります。Amazonの例のように、ユーザーのことを第一に考えてサービスを作る癖付けができますよね。
また、プレスリリースを出したあとにこんな感じで閲覧数が見れたり効果検証ができるサービスもあるので、反応を見ることでチームのモチベーションになったり、機能などを見直すきっかけにもなったりします。
さらに、プレスリリース日時を決めてしまうと開発が捗ります。デッドラインを決めるのは大切!
まずはプレスリリースの基本構造を理解
まずはプレスリリースの基本構造を理解しましょう。
ここで謝罪ですが、さっそく別の記事に誘導します……すみません。。
プレスリリースの「基本の型」だけで1記事分になってしまうので、上記記事でまとめました。この記事では、基本を頭に入れてたうえで「で、スタートアップは特別でして……」という話をしますね。
だから基本構造の記事をまずは読んでもらって、必ず戻ってきてください!
この記事ではさらっと解説します。
最近はテキストと画像だけざっくりと用意して、配信サイトに流し込むだけという人もいます。たしかにそれも時短です。
でも、ゆくゆくはテレビとかねらいたいですよね?テレビ・新聞・雑誌は、2018年現在でもFAXで受け取るところがほとんどなんです。
だからこの型はやっぱり踏襲したほうがいいかなと。物理的に文字数が決まっていると、余計なことも書けずソリッドな文章になりますしね!
型がわかったら、PR TIMESなどで他社のプレスリリースを見て研究しまくりましょう。まずは10本、徹底的に読み込むべし。
スタートアップならではの入れるべき要素とは?
上記で紹介した【プレスリリースの基本構造】は抑えつつ、スタートアップならではのポイントをまとめます。
大手企業とスタートアップの差は、なんといっても「認知度のなさ」です。。
同じ内容のプレスリリースでも、大企業が出すのと無名の小さな企業が出すのでは受け取り方が変わります。その点をふまえると、大手と同じように書くだけでは足りません。
スタートアップだからこそ入れるべき要素を、順番に見ていきます。
1. 何が新しいのか【新規性】
スタートアップに求められているのは何よりも「新規性」です。
どういう点が新しいのか、今までになかった点はどこなのかを一番に打ち出しましょう。
怖いのは「また似たようなサービス出てきたよ」と思われることですよね。次から次へと新しいサービスが生まれては消えていく時代なので、具体的に「〜〜〜という点で、日本初のサービスです」など、言い切ってしまいましょう。
2. どんな課題をどう解決するサービスなのか【社会性】
スタートアップの存在意義、それは社会課題の解決です。
何かしらの課題を解決するためにビジネスが生まれているわけなので、そこを明確に示しましょう。残念ながら「自分たちのサービスがいかに便利で役立つか」のアピールに終止しているプレスリリースは多いです。。
社会課題なんて大それたものでなくても、何かしらの悩みや不便さ、物足りなさが根源にあったはずなので、そこにストーリーをもたせて共感を呼ぶようなメッセージに落とし込めばOKです。
3. 業界全体のトレンドを入れる【客観性】
記者が記事にするときに、やっぱり市場全体のことが気になるものです。
「いかに素晴らしいサービスか」を宣伝するだけなら広告にお任せすればよいので、記者としては市場の背景がほしいんですよね。
全部解説しろ、というわけではありませんが、トレンドのさわりを盛り込んでおくと、記者にアプローチするときにも話が膨らみやすいです。
4. これからどこを目指していくのか【将来性】
スタートアップに求められるのは「未来感、ワクワク感」のようなところでもあります。
取り上げてすぐに潰れてしまっては困るので、企業としての将来性があるかどうかもポイントです。目標会員登録数など具体的数値で示せるのが一番ですが、それが難しい場合でも何かしら目指す方向性を示すといいです。
5. 創業ストーリーやメッセージ【人間性】
コンテンツファーストの現代では、起業や製品開発の背景にある「ストーリー」に関心が集まります。
経営者自身の人生ストーリーがそのまま会社のストーリーだったりもするので、起業に至るまでの経緯とか、本人からのメッセージがあるといいですね。ただし、自慢話・苦労話みたいにはしないこと。あくまで社会との接点をもたせる話を。
ここは自分で書くのがなかなか難しいと思うので、誰かに代筆してもらうのもいいです。
6. 経営者の顔写真&名前&プロフィール【人間性】
無名からのスタートなので、まずは経営者の顔と名前を覚えてもらうことが大切です。
普通の企業で入れているところが少ないので抵抗があるかもしれませんが、スタートアップなら必須ですね。知り合いの経営者などに聞いてみましょう。
プロフィールは経歴がわかるオーソドックスなものでよく、プレスリリース用につくる必要はありません。
7. 会社概要&会社ロゴ【信頼性】
会社概要とロゴを覚えてもらうという目的がひとつ、信頼性をもたせるためというのがひとつ、です。
無名の企業であることを忘れずに、しっかり会社の存在感をアピールしましょう。
差をつけるなら入れたい要素
もっと差をつけるなら、こんな方法もありです!
8. ユーザーの声を入れる【客観性】
これはガチの初期だと難しいのですが、少しテスト的にβ版を運用していたりすればできるんじゃないでしょうか。
こちらのサービスのリリースでは、お客様の声をクライアント企業側と個人ユーザー側の両方から取っています。いい例ですね!
客観性をもたせることは信頼につながりますのでおすすめです。
9. プレスキットをWEBサイト上に用意する【親切心】
「プレスキット(またはメディアキット)」というのは、メディアが自由に使っていい画像や資料などの素材を集めたもののこと。
これを上手く行われていたのがこちら。とてもキレイにまとめられています。
- プレスリリース
- ロゴ
- ムービー
- キービジュアル
- スクリーンショット
がダウンロードでき、同じページに「想い」も載せられています。これだけ配慮があると、メディアとしても思わず記事にしたくなっちゃいますね。
メディアに素材を送るときは、クラウドストレージで一回一回リンクを送付する企業が多いのですが、一般公開できない理由って特にないですよね?「ご自由にお使いください!」という勢いで公開しておくのがおすすめ。
特に、WEB媒体からの引き合いが多いスタートアップですので、電話でメールアドレスを伝えて画像を送ってもらう……なんてストレスがたまるだけです。時代にあわせていきましょう。
10. プレスリリースにFAQをのせてしまう【親切心】
これはどこの企業さんがやっていたか忘れてしまったのですが、プレスリリースの文末にFAQ(想定質問)を載せておくやりかたです。
メディアへの配慮ですね。よく聞かれそうな質問を自問自答することは、サービスの質向上にもつながるはず。
スタートアップがやりがちなNGプレスリリース
スタートアップ企業には優秀な方が多いので、プレスリリースもサクッと書けてしまうことが多いです。
ですが、ひとつだけスタートアップだからこそやりがちなミスがあります。
それは、想いの丈があふれすぎること。
自分で起業して生み出したサービスって、我が子のような存在ですよね。想いも時間もかけたサービスなので、熱量があふれるあまり主観的な表現だらけになってしまうことがあります。
「最高のユーザー体験を」とか「人生を変えるサービス」とか、根拠のない宣伝文は排除しましょう。
冷静に自社を見つめ、第三者の視点を入れて事実ベースで書くことが、メディアに取り上げられやすいプレスリリースのコツです。
スタートダッシュを張り切りすぎるリスクも……
これはあまりネット上で語られていない裏話なのですが、、、
以前起業家さんと話していて、β版ローンチの段階でPRしすぎることもリスクだよね、という話になりました。
世に出すということは、いつ真似されてもおかしくないという意味でもあります。プレスリリースを見て競合他社が似たサービスを出してくると、簡単に追いつかれてしまう可能性があります。
また、SNSなどでビジネス系インフルエンサーに拡散されまくってしまうと、その後ピボット(事業転換)しづらくなることもあります。
自分がいいと思って広めたサービスが翌月には180°違うサービスに変わっていた、、となると、インフルエンサー自身も信用を落としてしまいます。東京のスタートアップ界は意外と狭く人脈が命なので、そのあたり少し慎重にやりましょう。
配信方法と配信日は?配信サービス&直配信を併用
プレスリリース配信には、配信サービスを使いましょう。
プレスリリース配信サービス比較記事も書きましたが、設立3年以内のスタートアップならPR TIMES一択かなーと思っています。他のサービスや選び方、そもそも配信サービスの仕組みが知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
PR TIMESでは「スタートアップチャレンジ」というキャンペーンをやっていて、フォロワーを3人集めるという条件をクリアすれば(簡単)、毎月1配信が無料になります。
最近PR TIMESはスタートアップ支援に力を入れていますので、スタートアップ関連のメディアの人もよく見ています。おすすめ。
ちなみに先ほどもちらっと書きましたが、テレビ・新聞・雑誌はまだまだプレスリリースをFAXで受け付けているところばかりです。オフィスも持っていないスタートアップに、FAX何十通は厳しいですよね……。
配信サービスを使えば、オプションでFAXサービスもあるので完璧です。
スタートアップが確実に話を入れておくべきメディア
配信サービスで一斉送信するだけでは心もとないので、直接話も入れましょう。
こちらが現代日本においてスタートアップが確実に連絡しておくべきメディア・トップ3。TechCrunch、THE BRIDGE、ASCII STARTUPです。
直接記者さんへ連絡できればいいのですが、知らない人がほとんどだと思います。知り合いの起業家さんに聞くか、PRの人などに相談するといいでしょう。
個人宛でなくても、コンタクトフォームやプレスリリース用アドレスから連絡しておけば、ニュース価値次第で掲載してもらえる可能性は十分にあります。
配信日時についてはこちらの記事でまとめたのでご覧ください。
配信日時のおすすめは、火水木の10〜11時/15〜16時。スタートアップもそのとおりでいいと思いますが、プラス競合他社の動向などもわかれば判断材料に入れて配信日を決めるといいですね。
季節性などはあまり関係ないと思うので、意識しなくてOKです。
プレスリリースを出したあとの対応は?
とにかくシェアシェア!プレスリリース自体をバズらせるくらいの勢いで、SNS拡散しましょう。
このやり方は大企業の広報さんなどからは批判が出るかもしれません……。しかし、最近のスタートアップ界ではプレスリリース自体が記事のように拡散していきます。
みなさん情報が早いので、初速をしっかり!ということで個人的には広めるべきかと。
PR TIMESでは、アクセスが集中すると右側の「話題のプレスリリースランキング」に上がってきます。ランキングに上がることができれば、更にアクセスが見込めるわけです。
最近はあの手この手がありますので、知り合いのビジネス系インフルエンサーに事前にリリース日時を知らせてシェアを頼んでおく、、とかもやっている人がいるとか。
それから、もう少しあとの話をします。たまにあるのが「勢い良くリリースして以来、ぱったり音沙汰なし」というパターン。
淡々とサービス改善するのみだし、特にネタがない……。となりがちですが、スタートアップでも工夫次第でネタは無限につくれます。
- 季節キャンペーン実施
- 他社とのコラボや提携
- 協賛やイベント開催
- 好調情報
- 調査データを公開
このあたりが、作りやすいネタ。
一番いいのは他社とコラボすることです。個人の飲食店でもなんでもいいですし、大手とコラボの話がまとまれば、その企業のルートからもPRしてもらえます。
個人的に、KitchHikeさんとかはコラボの天才だと思っています。(これは業務提携ですが)
» 「みん食コミュニティ」を運営するキッチハイク、地域のごはん会「みんなの食卓」の全国展開に向け、ヨシケイと業務提携を締結
とにかく話題をつくって、忘れられないように。
「好調情報」というのは、こういうやつですね。
» フレンドファンディングアプリ「polca」が提供開始1ヶ月で、ユーザー3万人突破
ユーザー何人突破とか、何万ダウンロードとか、契約何社達成とか、数字でだせるもの。
引くところはうまく引きつつノッてる企業感を醸し出すことで、メディアだけでなくいろんな関係者へのPublic Relationsになります。
スタートアップは資金調達ばかりリリースしがちなのですが、それはあくまでIR情報なので、マーケティング寄りのPRもバランスよく入れていきましょう。
まとめ:スタートアップにとって、経営とPRは一体
以上、とても長くなりましたが、スタートアップのプレスリリースについてまとめました。
スタートアップのPRを何社かさせてもらって、やっぱり経営者自身にPR視点があるというのは強いなーと思っています。
「PR視点」とはつまり、世の中の時流を読めることだったり、消費者の目線で物事を考えられることだったり、話題をつくれる企画・アイデア力だったり。
よく「経営とPRは二人三脚だ!」と言われているように、経営者自身がこの視点をもっていろんな決断をすれば、自然と経営も上手くいくはずです。
これからPRや広報のことをもっと理解したい!という人におすすめの本まとめもあるので、あわせてご覧ください。
なにか不明点があればお気軽にコンタクトからお問い合わせください〜
おわり。